「歯磨きと歯磨き剤について」
皆さんは、1日何回歯磨きをしていますか?
朝食後と就寝前の1日2回、それとも毎食後の3回でしょうか?
実は、日本人の歯磨きの勤勉さは、国際的にみても、大変努力家の優等生なのです。歯磨きを日常にしている人が90%以上もいるという統計が出ています。しかし、昔から優等生だったわけではありません。今から何十年前、3・3・3運動という歯科の啓発運動が行われました。1日3回、3分間、食後3分以内に歯を磨こうというキャンペーンです。その頃の日本人は、朝起きて顔を洗い、歯を磨き、サッパリした後に朝食を採っていました。寝る前に歯を磨く習慣がなかったため、お口の中が綺麗に保たれている時間は、朝の歯磨きから朝食を採るまでの数分間しかなかった訳です。
この現状を変えなくてはと始まったのが3・3・3運動で、食後や1日数回の歯磨きを定着させたという功績はとても大きなものでした。歯磨きの習慣が国民に定着するにつれ、歯磨き剤の重要度が増し、消費量は当然ながら急激に増えました。
それだけでなく、昭和の初期に主流だった粉上の歯磨き粉は、ビン入りの半練り歯磨き剤へと変わり、その後現在のチューブ入りのペーストとなりました。また、その形状だけでなく、中身も劇的に進化しました。粉や半練りの歯磨き剤は、その成分のほとんどが研磨剤でクレンザーのように粗いものでした。これで、1日何回も歯磨きをすると、大切な歯は、すり減って削れてしまいます。そこで現在の研磨剤は、粒子が丸く加工され、歯を傷めない硬度でありながら、少量で歯の汚れなどが効果的に除去できる品質を備えています。
こうして、食後や1日数回の歯磨き習慣が定着し現在に至っている日本ですが、その努力が報われているかというと、これがいまひとつなのです。以前は、ムシ歯や歯周病などで失う歯は、他の先進国と比べて少なかったのですが、最近逆転されつつあり、日本にとって深刻な問題になっています。その大きな原因は、ムシ歯を例にとると、フッ素利用の遅れが挙げられます。予防先進国では、歯質の強化や再石灰化の効果が高いフッ素が歯磨き剤はもちろん、水道水や錠剤など様々な方法で盛んに利用され、ムシ歯予防に大きな成果をあげています。日本では、目下のところ歯磨き剤を使うフッ素利用が一般に行われています。薬用成分としてのフッ素には、歯を強くする効果が高まるようにイオン化しやすくなるなど、徹底的に工夫が加えられています。
このように、フッ素利用が遅れているとはいえ、こうしたフッ素入り歯磨き剤を上手に使って、毎日一定量を口内に供給すれば、ムシ歯予防に多大な効果があります。ただし使い方にはコツがあります。出来るだけ長く有効な濃度のフッ素が、口内に残っていることが重要なポイントになります。歯磨きの後、口内のフッ素濃度は、唾液によって薄まっていきます。しかし、有効フッ素濃度0.05PPM~0.1PPMというごく微量のフッ素が、次の歯磨きまで口の中に長くとどまっていれば、むし歯になるリスクが減ります。
子供用の歯磨き剤のフッ素濃度は、500PPMぐらい、大人は900PPMぐらいの歯磨き剤が多く販売されています。よって、歯磨き後のうがいは、丁寧にし過ぎると、口内のフッ素濃度が下がってしまいます。コップ1/3程度の水を使って2~3回の簡単なうがいにとどめます。就寝前の歯磨きで、有効濃度のフッ素が口内に残れば、唾液に流されることも少なく、朝までフッ素が効果的に作用します。
進化した歯磨き剤を上手に使って、大切な歯を守ることを、ほんの少しの努力ですが、継続すればその効果が必ず実感できると思います。
今回のブログ内容は、豊橋市商工会議所機関誌 「ニューボイス」1月号
“口から見直す体の健康” vol,27 にも転載させて頂きました。